2009
あきらめたら、そこで試合終了なんですよ…ってことで滑り込みました。
「いいか?俺は人狼もヴァンパイアも嫌いなんだよ!」
長毛種の猫が二足歩行して、人語を喋っている。前脚でしっかりとソーサー型のシャンパングラス(白ワイン入り)を抱えていて、シュールな光景だった。
「何で俺の部屋でそれを言うのかな…」
アムロの部屋のソファで、妖精猫がくつろいでいた。グラスの白ワインを舌でなめとると、妖精猫は器用に前脚でアムロを指し閉めす。
「それはアムロがウォーカーだからだ」
びしっと本人(本猫?)的にはカッコをつけて妖精猫は言い放った。彼はアムロの友人である人狼バーニィの恋人、クリスチーナ・マッケンジーの飼い猫ということに表向きはなっている。本当はマッケンジー一族と昔から付き合いのある妖精猫なのだけれど。スコットランド出身で由緒正しい(自称)妖精猫は、妖精の道を通ることに長けており、妖精の道が通じているアムロの部屋にひょっこりと現れる。今夜はバーニィとクリスとアルが三人で旅行中のため、暇つぶしにやってきていたのだ。
ヴァンパイアに襲われて、怒ったガトーの群れに囲まれて、ようやく解放されたかと思えば、自分の部屋で妖精猫がワインを舐めていた。しかも纏いついていた臭いに文句を言う。アムロはどっと疲れを覚えながら服を脱ぎ、シャワールームへと向った。考えようによっては、自分の部屋は今のところ安全なのだ。騒動があるところには近づきたがらない妖精猫が、のんびりとワインを舐めているのだから。
シャワーを浴び臭いを洗い流して戻ると、妖精猫は鼻をふんふんと鳴らして満足そうに頷く。
「よし。隣に座ってもいいぞ!」
「俺のソファなんだけどね…」
苦笑しながらも、お許しが出たのでアムロは妖精猫の隣に座った。
「ヴァンパイアと揉めたな?」
「ちょっと絡まれただけさ。理由は明日聞く予定」
空になったシャンパングラスに新しいワインを注ぐと、もったいぶった忠告をされる。
「どうせ碌な理由じゃないぞ。ヴァンパイアは嫌われ者だ」
「今の女王は、平和路線なはずだけど」
楽観的なアムロを妖精猫は鋭い視線で見上げた。
「ヴァンパイアの平和を適用されて、後悔しても知らないぜ?それで駆けつけた旦那に助けてもらったのか」
「いや、シーマさん。ガトーも来たけど…旦那はやめてくれ」
ガトーとの関係を揶揄されて訂正すると、妖精猫はチェシャ猫のように器用にニヤニヤと笑った。
「ガトーはアムロを伴侶だって宣言してるから、間違いじゃないだろ」
「ワインのおかわりはナシ」
「俺が悪かった」
素早く謝罪すると、妖精猫はシャンパングラスを差し出す。さきほど注いだワインは早々と空になっていた。
アルファ狼であるガトーはアムロを伴侶として扱っているが、実際は何の関係もない。ウォーカーであるアムロを人狼から保護するための方便なはずだが、時たま信じ込んでいる者もある。新人狼のコウは、まだ2人の関係の真実に気付いていないらしい。妖精猫は、ちゃんと知っていてアムロをからかっているのだが。言い訳がましいと思いながら、アムロは補足を口にする。
「うちの工場はちゃんと警備会社と契約してる。ガトーの会社だけどね」
「最近の人狼は働きものだな。この前きてた派手な人狼も、会社を経営してるって聞いたぞ」
「…ああ、そうらしい」
何気なく妖精猫が口にした言葉は、思ったより衝撃的だった。
アムロの怪我が治る前に、あの男は自分の群れがいる土地へと帰っていった。アルファ狼が群れから離れることがおかしいのだから、当然といえば当然なのに。事実が何となく、アムロには苦しく感じられたのだ。
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