吸血鬼は電波な夢をみるのか

吸血鬼小説はお好きですか？自分は大好きです。赤川作品みたいなほのぼの系やアン・ライス作品みたいな耽美系はイマイチ性に合わず、ホラー系やミステリ系、アクション系が好みなのですが。そんな訳で、自分では吸血鬼マニアじゃないと思ってますが…実はエヴァ検定のように自覚がないだけかもしれません。
ところで和風吸血鬼モノの佳作、小野不由美『屍鬼』が新創刊のジャンプＳＱで藤崎竜の手で漫画化されるそうで…ちょっと複雑な心境です。そんな複雑な心境と『ドラッケンフェルズ』復刊！が重なったので、ちょろっとお気に入り吸血鬼小説について語ってみました。レビューの一部は昔書いたものを転用してたりしますが（笑）

『ドラキュラ紀元 (創元推理文庫)』キム・ニューマン
ドラキュラ伯爵は実在した。そしてブラム・ストーカーは彼に敗れ去った。伯爵は寡婦であったビクトリア女王と結婚、イギリスを手中に納め吸血鬼たちは歴史の舞台に踊り出る！物語の主人公は、美しい吸血鬼ジュヌビエーヴ。孤高な彼女は「切り裂きジャック」の事件を通じて英国のために働くボウルガードと知り合う…。架空の歴史を舞台に繰り広げられる精緻なミステリー。吸血鬼がここまで堂々として、珍しくもない物語は他にみられません。

『フィーヴァードリーム〈上〉 (創元ノヴェルズ)』『フィーヴァードリーム〈下〉 (創元ノヴェルズ)』ジョージ・Ｒ・Ｒ・マーティン
これは男の友情の物語です。フィーヴァー・ドリーム号という蒸気船にかけた船長と吸血鬼の熱い夢。吸血鬼の一族を、吸血という呪縛から解き放とうとするジョシュア。彼の正体を知りながらも、友情と協力を約束する海の男（ミシシッピ河だけど）船長。種族を越えた夢で結ばれる友情は、男のロマンです！かっこいいぜ、船長！親父だけど。物語は、ジョシュアと対立する吸血鬼との戦いもあるんですが、全編を貫くのは友情です。ラストシーンとエピローグにはじーんときました。

『ヴァンパイア・バスターズ　集英社文庫』ジョン・スティークレー
ローマ法王庁をバックにもつヴァンパイア退治特殊チーム・クロウ。だがチームは崩壊の危機に瀕していた。助っ人として影のあるガンマンが新たに雇われる。そうする内にも、ヴァンパイアたちの攻撃はクロウたちを追いつめてゆく。「ロックンロール！」の掛け声、ハイテク素材の鎖帷子、十字弓と銀の弾丸。ジェットコースターなアクション、苦悩するリーダー・クロウ。彼らと共に生命をかけるハメになるガンマン・フィーリクス。映画的な見せ場が満杯！実際、映画化もされてます（笑）

『死の姉妹 (扶桑社ミステリー)』アンソロジー
いろんな作家の吸血鬼短編アンソロジー。表題の「死の姉妹」はファンタジー作家のジョイン・ヨーレンのもの。ナチスのホロコーストを題材にとるこの話は、切なくて愛しい祈りが込められているように感じます。虐げられて殺され、数え切れない死を見つめた女吸血鬼が、一人の少女の救いを神に願う。人間の残虐さが、虚しくて哀しいです。

ジャック・ヨーヴィルとはキム・ニューマンの別名義です。なので、この話にも孤高の女吸血鬼ジュヌビエーヴが登場します。しかし舞台はファンタジー世界です。ＲＰＧというかテーブルトークな世界観。そして物語はミステリです。25年前、選ばれたパーティが邪悪な魔法使いドラッケンフェルズを倒します。そして現代、かつての冒険が演劇として上演されることに。呼び集められる、生き延びたものの落ちぶれたパーティメンバーたち。そして、大魔法使いが倒された城で惨劇が始まります。一人、また一人。惨殺されていく人々。犯人は誰なのか。邪悪な魔法使いの呪いか、それとも人間か。渦巻く謎に、作家生命をかける劇作家と女吸血鬼ジュヌビエーヴが挑みます。とにかくテンポがよくて面白かったです。あとジュヌビエーヴが素敵すぎますｖ